大理石ワークトップの研磨再生

先月26日,伊勢崎市でパティスリー店のオーナーシェフH様からお電話がありました。「大理石研磨の方ですか?」。お会いしたときに「検索したら一番上に出てきた」とおっしゃいましたが,たぶん群馬とか地域名を入れて下さったんだと思います。

お電話で聞いた情報では,15年ほど前に譲り受けた大理石天板で,サイズは800×1800×50ぐらい。白い大理石。チョコレートを加工するのに使いたいので一度きちんとメンテナンスしたい,ということです。チョコレートはテンパリングという作業で美しい光沢とくちどけを与えることができるんだそうですね。そのための作業台として熱伝導が遅くて温度が安定している天然石材が適しているのだとか。

「チョコレート テンパリング 大理石」って検索すると,動画が出ますけれど,大理石じゃなくて御影石だと思われる天板もあります。またスパチュラやパテナイフの使い方も様々で,スパチュラをコツコツ当てる方法も紹介されています。専門家ではないので差し引いて考えてほしいのですが,大理石は柔らかいので,「コツコツ当てる」のには向いていないと思います。その場合は大理石よりずっと硬い御影石の方が向いていると思います。

早速下見に伺いました。これぞ大理石という感じのビアンコカララです。加工機械が置かれていたので半分ぐらいの面積が隠れていたのですが,傷があるのが分かります。研磨では消えない陥没なので,充填が必要です。

ドイツのAKEMI社が販売している補修用パテはフードセーフの認定を受けていて,食べ物が直接触れても安全安心です。急いで発注します。Hさんにはお見積りを差し上げるとすぐに「お願いします」と注文をいただきました。

狐塚さんに相談すると,一番低い番手でいったん磨いてから傷補修するといいんじゃない?とアドバイスをもらいました。ですのでまず400番で磨き,補修,その後均してから800,1500,3000番と5工程で組み立てました。

厨房内で天板の2方向が壁に接していて,他の2方向も1人が通れる程度のスペース。なかなかタイトです。幸い天板が多少スライドするのと,台を兼ねているスチールケースが動くので,養生ほかの作業では適宜動かすことができます。養生をたわませて奥から手前に水が流れてくるように工夫しました。

大理石ワークトップ

下見で確認した以外にも小さな傷が無数にあります。それを埋められないかと思って充填剤を伸ばしてみました。

充填剤を塗り延ばす

これが大失敗。充填剤は研磨用パッドでは削れません。一部分削れて石まで行った場所も,充填剤の削りカスが石表面に傷をつけてしまいます(涙。結局3枚刃で剥がしました。グリップ形状と替刃の丈夫さから,剥離作業が効率的だったのはウンガーのスクレーパーでした。膜を全部剥がしてまた400番で磨きなおします。そして小さな傷には目をつぶって大きめの3個の陥没に集中することにしました。

3つの陥没傷

手前の分

3000番で磨いた時に不注意で線傷を作ってしまい,800番まで後戻り。緊張でのどが渇きます。でも,シェフのHさんが,「映り込みがすごい!,それで十分,手間かけさせて申し訳ない」と励まして下さるので続けることができました。お引き渡しの状態です。

大理石ワークトップ研磨再生

蛍光灯の右上が補修箇所

お見せするのも恥ずかしい仕上がりです。歩行傷でも400番で再生できるからと思っていたのですが,リッページも削れるぐらいの,もっと粗い番手が必要だったのでしょう。補修剤はペーストタイプを選んだのですが,粘性が強烈で,うまく傷を埋めて平らに仕上げるのが難しい。まだまだです。

Hさんにお聞きしたところ,天板に傷があると,そこにチョコが入ってしまうけれど,作業に支障が出るわけではないということです。ほっとします。H様,このたびは当店へのご用命をありがとうございました。大変貴重な経験をさせていただきました。

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