ストーンケアスペシャリスト養成講座

先月末から木曜日ごとに3日間,ストーンケアスペシャリスト養成コース<基礎編>を受講してきました。有意義で充実した内容だったので,修了した今,ちょっと興奮気味です。子どものように喜んでいることを,この写真から想像してください。修了証書に英語表記があるのは,グローバルスタンダードを目指す新井田さんの意識の現れです。そしてそれは夢物語ではないと思います。僕はバッジもほしいって言ったんですけどね(笑。

今回はやむを得ない事情で2人のキャンセルがあったそうで,4人の受講でした。新井田さん,水谷さん,受講生のみなさん,お世話になりました。

ストーンケアスペシャリスト養成講座修了

詳しい内容はもちろん書けませんので,この講座に申し込むことになったこれまでの経緯や,今後の目標みたいな部分を綴らせていただきます。そして,石材に関する知識は,まるで知っていたかのように書きますが,すべて今回勉強させてもらった内容です。

歩行によって表面が傷んでいる大理石も,ダイヤモンドのパッドを使ってキレイな鏡面に再生できるということ自体は,稲福さんのHPやブログを見て,感嘆しながら知りました。ハウスクリーニング専業になってすぐのことです。

水あかで見えにくくなった鏡を磨くために作られたダイヤモンドパッドがあり,ミニサンダーに装着して使うのですが,上手にやると真っ白なものが新品の透明感を取り戻します。ただし1枚4,000円程度と,その商品のサイズなどを考えると高価に思えます。

それが,大理石を磨くとなると,14インチのポリッシャーにパッドが4枚。最低3から4工程(目の粗いものから細かいものの4種類)。仮に1枚4000円として16枚,パッドを貼り付ける土台も含めると約8万円。ポリッシャーのような機械を買うのと違い,それでうまく磨けるかどうか自信の持てない状況では,踏ん切りがつきませんでした。

それでも研磨再生には関心があり,当店では小規模な面積に対応できるサンダー用が良いと思って買いました。このころ頻繁に更新していた狐塚さんのブログが刺激になりました。(今はHP内のログをお使いです)。当店の購入は2009年1月,4枚で3万円です。けっこうしっかりした値段ですね。三和研磨製だと知りました。

買ってもなかなか進まないのが僕の悪い癖で,それからこのパッドを使って磨いたのは2軒のみ。マンション玄関の人造大理石でした。2回目でなんとなくつかめたのですが,時間がかかります。もともと回転マシンが入らない隅用パッドでしょうからね。

稲福さんはもちろん,狐塚さんはどんどん大理石研磨をこなしている様子です。そして教えてもらったのが,Stone Masterの新井田さん。ブログを拝見すると,もう引き込まれました。そのころ僕が見たのは旧ブログでしたけど。建築建材展に出展されていると聞いて会いに行きました。1時間ほどお話し出来て,ますます惹きつけられます。

ストーンマスターの石材研磨資材は目移りするほど豊富で魅力的です。ですがすぐさま手を出さず,まずは洗剤を購入。天然石や無垢木材を使った浴室で試して効果を確認。その後,この講座のことも教えてもらい,昨年末の講座開催のお知らせを見て,「今でしょ!」ということで申し込みました。

ハウスクリーニングや特にビルクリーニング業界では,石材は難しい,失敗した時の損害も大きい,だから怖いとされています。石材用と言われる洗剤やコート剤でさえ施工に失敗することがあります。だから水あかで風合いが変わっていても,エフロが出ていても,染みがあっても,通常の床用洗剤で洗うだけとか水ぶきだけの定期清掃になりがちです。僕もまさにそのパターンから逃れられなかったので,石材メンテナンスについて基礎からの知識と技術を提供してもらえるのは大変心強いです。

基礎とはいっても,研磨はもちろん,補修,シミ抜き,防滑,コーティングの実技,随所に適切な洗剤や洗浄時のコツの話も出てくるので,石材メンテナンスについての入り口全部を紹介してもらえたと思います。これは石材メンテナンスはどれか一つの分野だけではなく,全体のシステムを構築してこそ完成するという,30年現場を経験してきた新井田さんの方針なのでしょう。もう一つの重要な点は,事前に十分な打ち合わせが必要だということです。ビアンコカラーラに出来た小さな白い班,リッページ(隣の石との段差)の処理,シミ抜き,防滑加工で何を重視するかなどには特にそれが求められます。

上の写真で修了証書の左側は,石材の鉱物的・科学的分類です。一般に大理石と分類されている石材でも,有名どころで蛇紋石とビアンコカラーラ・ボテチーノ,そしてタソスホワイトでは生成の過程や組成が違って,3つの別の石種だと理解できました。写真にはありませんが,堆積岩の中にも大理石とくくられている石材もありました。この中で蛇紋石は再研磨が難しいとされていて,研磨を扱っている方でも敬遠されることが多いのです。

これまでの受講生はみんなそうだったそうですが,再研磨にはまります。時間が足りません。Made in Japanの高品質ダイヤモンドパッドを使えば,手磨きでさえ,うっとりするようなつやを取り戻せるからです。このパッドをポリッシャーに貼って磨いたらどうなるか,ご想像にお任せします。

本磨きの蛇紋石サンプルで実技をさせてもらいました。番手は800~1500~3000~6000です。3000までは2種類のパッド(ドットパターンとストライプパターン)を並行して使い,6000はストライプで全体を磨いています。当然ですが,石材表面はドライヤーで乾かしてあります。

まず傷とりに当たる800番です。艶が消え,白っぽくなり,指も引っかかる租面になります。ほとんどの歩行傷はこの時点で隠れることでしょう。ただ,知らない方がこの状態を見たら「戻るのか」と不安になるでしょう。

800番で傷とり

1500番は傷とりとつや出しの橋渡しの重要な役割があります。面白いのは,同じ番手で同じように擦っても,パッドの種類で仕上がりが違うことです。左側は次の番手に進んでいいのかと思うくらいです。同じパッドを使っても石材ごとに仕上がり程度が違うし,番手を上げればつやが上がるというものでもないそうです。

1500番で傷とり研磨

3000番になると,これでもいいと思える程度に艶が戻ります。2種類のパッドで,どちらもほぼ同じようなつやに回復できました。参考までに,蛍光灯の色合いが左右で違います。上の養生テープに近いあたりは触っていない場所です。蛍光灯の写り込みで,磨いた場所も同じ程度のつやに戻ったことが分かると思います。

3000番でつや出し

そして6000番。通常の再研磨ではオプションになるでしょう。これが仕上がるとうっとりします。目で見ると,元の本磨きより透明感があるのです。今回は色が無かったのでこの石では試せませんでしたが,もうひと手間かけてさらに驚異的な光沢になる場合もあります。最後の写真だけ少し離れたのは,このショットが目で見た透明感に一番近かったからです。カメラ(あるいは撮影技術)の限界で,同じアングルだと感激が伝わらないのです。(養生の左上側は,僕より短時間であそこまで戻しています)。

せっかく磨いたのですから,無機系で透湿性のある高性能コーティングをすることで,石材を汚れや傷から守ると同時につやを上げることができます。石材用のコート剤は,防水し,なおかつ内部からの湿気が抜けなければなりません。繊維で言うゴアテックスみたいな機能ですね。さらに内部にひそんでいるバクテリアや菌を抑え込む抗菌作用を持たせれば,パーフェクトです。コーティングもオプション加工ですが,必須と言って過言ではありません。

6000番で得られる透明感でうっとり

大理石の鏡面再生研磨。やっている自分が楽しいですし,これがサービスとして提供できればお客様は大感激だと思います。今後,大理石の研磨はもちろん,御影石にも挑戦したいと思っています。(もっとも蛇紋石は,組成から考えると,火成岩に属する花崗岩(御影石)に非常に近いといえます。ですからここで使っているストライプのパッドは御影石用です)。

身近なところでは,キッチンの天板に使われる人工大理石,そして玄関エントランスの天然大理石の鏡面再生研磨を当店も承ります。マンションエントランスを始め,結婚式場,高級店舗,ホテル,豪邸の床が大理石張りでリフレッシュしたいというご要望も想定しています。料金についての大まかな目安はありますが,まだ検討段階です。ただ,現場を重ねることで経験を積ませていただくこちらの立場もありますので,半年から1年ほどの間は,料金を含めて「勉強」させていただきます。

日本人は,わびさびを好み,その価値観が生む美意識を持っています。日本庭園の考え抜かれた場所に置かれた石は,苔むしていくことに価値があり,美しいのです。

ところが,現在ほとんどといっていいと思いますが,西洋から取り入れた様式で石材が使われています。この場合は,新築した時のままを保つのが美しさであり,価値があります。ところが,石材メンテナンスがしっかりしていないため,石は汚れてゆくもの,いよいよとなったら取り替えるしかないという流れになっています。

石材は石張り工事のときに,裏面と小口にしっかりコーティングしなければなりません。この必須工程の重要性がほとんど見過ごされています。石張り工事の現場から訴えても,設計段階で見積りに入っていない費用は決して認められることが無く,何十年と同じ失敗が繰り返されています。石張りの際に見えなくなる場所をコーティングし,工事が終わったらすぐに,目地を含めて表面をコーティングするための費用は必要経費です。その後適切にお手入れを続ければ,いつまでも建てたときのような美しさが保てます。長い目で見れば,コストは今と変わらないのではないでしょうか。美観・資産としての価値が高いレベルで保たれます。そして記憶を形にしたようなもの,地球が育んでくれた鉱物をいつまでも美しく使い続けることができます。それは,大げさにいえば使わせてもらう人類の責任です。

石材メンテナンス,「ストーンケア」って単に商売ではないですね。

2 Responses to “ストーンケアスペシャリスト養成講座”

  1. K より:

    ストーンケア、深いですね。

    たしかに6000番、美しい・・・☆

    PAGANIのようだ・・・

    あ、すいません、また発作が!

    • ryo より:

      石材が自分の手で輝きを取り戻すというのは,ワックスを塗るのとは全く別の感動があり,満足感があります。

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